東之宮古墳掲示板

東之宮幻想.2 ククの森

第1部 いくつかの使者

1:石振まつりの夜

山々が色鮮やかに変わるころ,ツヌの里では五年に一度の「石振りまつり」が盛大に行われていた。周囲から多くの人々が集まり,市場にはさまざまな品物が並び,その賑わいはいつまでも続いていた。
ツヌの王,カガセヨとその仲間たち,いつものように滔々(とうとう)と流れる木曽の流れを見守っていた。そして,その夜の出来事,
一匹の大きな大きなハンザキ(オオサンショウウオのイメージ)が岸辺に現れる。
「これはすごい,捕まえましょう。川の神からの贈り物かもしれませんな・・・」
だが何か,不吉な出来事の予感がする・・。

2:鳥船

その日から,木曽の流れに溢れるばかりの魚たちの陰がしだいに消えていった・・。
上流で何か異変が起きているようだ。水の流れはあくまで静かだが・
「ウの館」ではこのただならぬ事態に長老たちが立ち上がる。
「カガセヨ」さま,「このツヌの里に豊かな木曽川の恵みをもたらしてきた川の幸が少なくなりました。こんなことは聞いたことがありません。何故なのか調べてみる必要があると思うのですが・・。」
「大変気になっていることです。選ばれしものを集い,調べたい。」
そのためには,いくつかの渦を巻く川の瀬を乗り越えるための丈夫な鳥船を造る必要があった。
誰か「ウキタカラ(浮宝)のトリ(戸利)」を呼んできてくれ。

3:イヌグスの木

ツヌの里から北西に,「二つ山(ふたつやま)」の麓(ふもと)にククの森が広がっていた。
さまざまな神が集うという不思議なククの森,ムシカの神が住むと言い伝えがある。そこには大きなイヌグスの大木が育つ。
船作りの名人である「トリ」は,一族の掟に従い
丈夫な鳥船をつくるためには,そのイヌグスの大木が必要だ。
「ククの森」深くに美しい泉が湧く場所があります。その傍らに三本の大きな大きなイヌグスの大木があります。その一つを用いたら良いと思うのですが・・。ただ・・
許しを請わねばなりません。ククの森に住まう神々に
では,さっそく使者を「クロモジの木を取り,枝を裂いてシシの肉を供える」 そして森の神に従え。

4:ヤマトからの友人

このツヌの里は,西と東の国々を結ぶ古くからの陸路が通じ
この地の「ウの渡し」で木曽の流れを渡る。まさに川と陸の道が交差する交通の要
その地にヤマトからの使いがやってくる。
「カガセヨさま,ヤマトからの使いと申すものがお会いしたいと申しております」
誰かと思ったら「タギの里のミオヒコ」ではないか・・。懐かしいな
古くからの友人との再会。ウの館では友を迎え宴の準備であわただしい。
ツヌの里に伝わる「ウササ楽(あそび)」がはじまった・・。
「カガセヨ,元気そうだな」「ミオヒコもかわらぬようで何よりだ・・」
「しかし,ツヌの里のカガセヨの噂は大変なものだな・・。至る所で聞いたぞ・・」
「水の流れを鎮めるとは,凄いことを成し遂げたものだ・・」
「ヤマトのオオキミもぜひ,もう一度合いたいと言っておられた」
ところで, ここは西の国と東の国を結ぶ要の地。
これからはさらに東の国々と豊かな交易を盛んにしたいと考えている。
そこで,「東への山道」を整えたい・・。カガセオなら何とかしてくれるのでは・・と思い。訪ねてきた。
このツヌの里と木曽川流域の民にとってもそれは歓迎すべき事だと思っている。
考えておこう。

第2部 水神

5:旅立ち

ククの森から切り出されたイヌグスの大木は,ウキタカラのトリたちにより見事な鳥船によみがえった。
「ウの渡し」では鳥船に神を宿す儀式がはじまる。
カガセヨとその仲間たち,そしてトリが旅たつ時がやってくる。
今もなお,木曽の流れには魚たちは戻ってこない。
「では長老どの,あとの事は頼みます。まずカモの里を訪ねることにしたい。あのモノたちならば木曽の流れの異変を知っているはずだ・・・」
この木曽の流れには,至る所に川の瀬と淵があり,そこには恐ろしい神が住む・・
大丈夫だ,このククの森に育つイヌグスで造った鳥船ならば
トリ頼むぞ・・

6:カモの里

木曽の流れと飛騨から落ちる水,その流れが交わる場
ここをカモの里と呼ぶ。そこには水神と供に暮らす一族がいた。
「カガセヨさま,お待ちしてました」
「カモのウズメ」久しいの,皆元気にしているか。
カガセヨさまが幼き日,この里にて魚を捕り狩りをした時が,懐かしく思い出します。
ところで, 「木曽に住まう魚たちの事だが,気づいているだろう・・。」
「はい,とても心配しております。ただそのわけが・・・」
しずれにしても,まもなく飛騨の流れにそって水神が降りてきます。その時に
しかし,この鳥船は素晴らしいものですね・・。

7:「水神」との出会い

このカモの里からさらに川をさかのぼると,川のあちこちに
大小の穴が無数に開いた不思議な場所がある。アガタ淵
そこに,大きな雨が降った新月の夜,水神が現れると伝えられている。
掟により私たちは行く事ができません。
この「川鵜」たちにあない させましょう。「ウ」の案内
カガセヨさまならば,おそらく水神に合えるかもしれません。
行かれますか・・。 鳥船をあやつり,アガタ淵に向かう
深夜,静かな淵の川岸に何かうごめくモノがいる。
蛍の光がどこからともなく・・やがて大きな塊となり光りだす・・。
一つ,二つ,いや数匹の大きな大きなハンザキのようだが・・
「我らの仲間を返してくれ,ならば許すであろう・・」
驚き・・引き返す。

8:無数の影

ウズメ,これはどういうことか教えてくれないか。
カガセヨさま,これから神との闘いがはじまります。
覚悟しなければなりません。 あなたは神の使いを無視したのですから・・。

確かに,あなた様がなされた工事により大きな洪水はなくなりました。
しかし,大きな水は豊かさを運んできてくれます。小さな虫や草ぐさが少なくなっり,少しずつ森や沼が枯れてゆくのです。
木曽川の流域に住まう民は,みな等しく川の恵みを受けることができるはずです。
里の都合だけで,川の流れをかってに変え,
魚や虫たちの住む場を奪ってはいけません。
河原にいる玉石にもその役割があります。
彼らはそのことを教えにやってきたのです。

まもなく,このカモの里に神とその使いたちがやってきます。
川の水が真っ黒くなり,虫の音が途絶える。
無数のハンザキの群れ,すべてを食べ尽くす・・。
その水辺に映る物影から一つの不思議な文様(人物禽獣文鏡のイメージ)が浮かび上がる。小さな陽炎の群れが近づき,何かを訴えるように絵を描く・・。
カガセヨは鳥船をこぎだし,その文様を鳥船に刻み込む。
しだいに意識が薄れ・・気を失う。

第3部 鏡の中に住まうモノ

9:長老との会話

ツヌの里にもどったカガセヨたちは,この不思議な体験を
長老をはじめとする里の民に告げる。
木曽川の流域に住まう民のために行った,大工事,川の流れをかえる事
それは,川に住まうモノにとっては,また違った意味をもっていた。
海からやってくるモノ,海にもどっていくモノ
その土地にしみ込んだ,水の匂いや香りが重要なのかもしれない事を
教わったようだ・・。
鳥船に刻んだ「この不思議な文様(人物禽獣文)は・・」
不思議な生き物のようにも思うが・・。何かの呪い
川のモノたちを鎮めるためには,どうしたらよいのであろうか・・。

10:贈り物

タギの里のミオヒコより贈り物が届く。
中には「ふた口(2点)の見事な鏡(三角縁神獣鏡)」があった。東への山道への夢。しかし,
ツヌという山と川,沼に囲まれた,美しい里。
代々受け継がれてきた,山には山の,川には川の掟がある。
そうたやすく,山を切り開いたり,沼を埋め立てるわけにはいかない
こうした
山や川から学んだ教えを,後の世に伝えることが必要なのかもしれない・・。
「水神」が伝えようとした文様,水に住まうモノたちの思いを込めて・・。
そのためには,
あらたな鏡を作り,この教えをその鏡の中に写しとるのが良い。

11:一目連(いちもくれん)

木曽の流れと揖斐の流れが交わる地に
風と火を崇める不思議な一族がいる。神の山「イブキ」からの風の道が通る場所
彼らは山から石を取り,それを溶かしてさまざまな道具を造ることができると聞く。彼らは一目連と呼ばれていた。
タギの里に近い,すぐにミオヒコに使いを送る事にしよう。
ミオヒコが一目連をつれてツヌの里に来る。
水神が描いたこの不思議な文様を鏡に閉じ込めることができないか・・。
一つの小さな鏡が出来上がる。
ツヌの里の北山に住ませ,ここを「カガミ野の里」としよう。

12:ククの森

さまざまな神が集い,ムシカの神が住まう不思議な森。クク
この場所に生けるモノ,住まうモノすべてを集め
この鏡を掲げて,皆で誓おう。
ともに詠(うた)い・踊り,酒を飲み・・楽(あそび)
忘れてはならない,ククの森での誓いを・・
そしてそのためにも
二つ山の高い峰,これを本宮(もとみや)とし,この地の神を祀る社(やしろ)をつくることにした。

カガセヨとその仲間たちによる新たな里の物語がはじまった。
豊かな川と森の恵みがもどってくる。虫たちや草ぐさ
ツヌの里の市場は復興し,再びさまざまな人々が集い賑わう場となっていく。
ツヌの里の王,カガセヨ
山の神と水の神への誓いが通じ,流域の多くの人々から尊敬され
さらなる偉大な王へと成長していくのであった。


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Last-modified: 2008-12-22 (月) 10:56:12 (622d)